【輸送改革】第53回 配送運賃の削減
2013年5月15日
一般企業では、配送を運送会社に全面委託している場合が多い。よって、運送会社の選定は「配送品質」「適正運賃」を実現する上で非常に重要である。しかし、配送運賃の適正化を考える上で難しいことは、すべての会社に共通する「成功した運賃削減手順」が無いということである。今回は一般的な改善の手順を解説したい。
配送運賃の最適化で大きく影響することは、物流センターの所在地である。物流センターの近くに、路線便や個建て便等の運送会社の営業所が多くあるかがポイントになる。地方に行けば土地代が安くなるため、物流センターを交通の便の悪い場所に建設する会社を時々みかけるが、大失敗をしているケースをみかける。土地代は安いが、「物流センターで働くパートが集まらない」「集荷してもらえる運送会社が少ない」という課題をよく耳にする。競争原理が働かないため(条件が良い会社に移ってしまう)、「物流人件費増」「配送運賃増」につながる。また、運送会社の集荷時間に合わせなければならず、当日出荷の受注締め時間を早く設定しなければ、翌日午前納品ができない。その結果、物流サービスでマイナス面が出ることもある。
また、運送会社の営業所の状況によっても配送運賃は変動する。運送会社の幹線輸送の往復の積載バランスが崩れている場合は、積載量が少ない方面への荷物を増やさなければならず、運賃が下がる場合がある。よって、皆様の物流センター近辺の運送会社の状況を定期的に把握していかなければ、最適な配送運賃が実現できない。
まず最初に行わなければいけない事は、現在使用している運送会社の「選定理由」を明確にすることである。物流センターに集荷可能な運送会社をすべて挙げた上で、今の運送会社を使用している理由が論理的に説明できなければ、再度検討をする必要がある。最近ではインターネットで調べれば、運送会社の営業所の場所がすぐ調査できる。また、運送会社の集荷が多い夕方の時間帯に、皆様の物流センター近くを車等で巡回すれば、集荷可能な運送会社を見つけることも難しいことではない。
一般的には、運送会社を選定する条件としては、「お客様の所在地(方面)」「物量」「運送会社への荷渡し時間」「駐車スペース」がある。物流センターの駐車スペースの広さにより、物理的なトラック台数が決まる。トラック台数が決まれば、その範囲内で「荷渡し時間」「運賃」「お客様への納品時間」を比較して運送会社を選定することになる。
また、運送会社の運賃を比較する上で、地域別運賃比較表を作成することをお薦めする。基本的には県単位で物量毎の運賃を比較する。作成上の注意点は、路線便と個建て便を同じ条件で比較できる様にすることである。路線便は重量もしくは容積(才数計算。1才=1立方尺≒0.027818立方メートル)で配送運賃が決まり、個建て便はサイズ(重量も条件にはいる)で配送運賃が決まる。比較する方法は、皆様の物流センターで良く出る出荷ケースの容積と重量を選定するところから始める。例えば、10kgと5kgの2つのダンボールケースが多い場合は、その2つのパターンで作成する。
この表を作成すれば、地域別物量別で一番安い運送会社が決まる。次に「運送会社集荷時間」「得意先納品時間」をふまえた上で、物流の出荷作業の見直し(荷造り完了時間を早める方法、配送担当者が運送会社を瞬時に選定する方法)を検討し、運送会社を決めるのである。100点満点の配送を、最初から求めるといくつもの壁にぶち当たるためなかなか進まない。運賃削減効果が大きい都道府県単位で、徐々に改善を進める気持ちで着実に実行して欲しい。
約1年間にわたり毎週執筆をしてきましたが、今回をもって最終としたいと思います。皆様の企業の物流改革を推進する上で、何らかのヒントを掴んで頂ければ非常に嬉しいです。現在、全国各地で公演もしておりますので、時々弊社のHPで日程を確認して頂き是非ご参加ください。また、2冊目の単行本を執筆中ですので、ご期待ください。長期のご購読ありがとうございました!
このコラムは大塚商会様のERPナビにて連載中のコラムを並行掲載しているものです。
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